αリポ酸の名前は聞いたことがあるけれど、実際どんなもの?どんな物質、どんな性質?どんな特徴があるの?といった情報はほとんどわからずにαリポ酸を摂取している人もいるかと思います。

それほど急激に注目を集めたものです。効能や効果ばかりがクローズアップされてしまい、そのものについて知識がない人も多いのも仕方ありません。

まず、αリポ酸は、淡い黄色の結晶状の粉末で硫黄化合物なので1000%純粋なαリポ酸をなめると、ビリッとします。無臭かわずかに臭いがする程度で、光や熟に弱いという性質をもっています。

αリポ酸とは別名「チオクト酸」とも呼ばれる物質です。1951年生化学者のレスター・リードが大量の牛の肝臓からαリポ酸30gを分離することに成した後、研究が重ねられてさまざまな作用が判明しました。

ビタミンに似た物質で、体内で自然に生成されます。「普遍の抗酸化剤」と親しまれています。リポ酸はフリーラジカルからからだを守るという重要な役割をし、ヨーロッパでは糖尿病の治療に広く使われています。私たちは年をとるにつれて体内で十分な量のリポ酸を生成できなくなるため、サプリメントによって補う必要があります。

カリフォルニア大学バークレー校の膜生体力学グループを率いる著名な科学者、レスター・パッカー博士はリポ酸と抗酸化剤の権威です。博士の発見によると、特定の働きしかしないほかの抗酸化剤とは違って、リポ酸はほかの抗酸化剤が不足したときにピンチヒッターとなる「フリーエージェント」なのです。つまり、ビタミンEビタミンC が不足すると一時的にリポ酸がその役割をしてくれるのです。

また、リポ酸にはビタミンCやビタミンEの効果を高める作用もあります。パッカー博士の研究所で行われた、ある研究から非常に興味深い結果が得られました。3つのグループに分けた生後12週間のマウスにそれぞれ異なるエサを与えます。

第1のグループには通常のエサを、第2のグループにはビタミンEが不足するエサ、第3のグループにはビタミンEが不足し、リポ酸が添加されたエサを与えました。

第1グループは正常に成長しましたが、第2グループ(ビタミンE不足、リポ酸なし) は重度の脊痩症候群が現れ、衰弱している様子でした。
そして第3のグループは、ビタミンEが不足していたはずですが、リポ酸を投与していたため正常に成長し、ビタミンE欠乏症の兆候は見られませんでした。

リポ酸がビタミンE の欠乏によるダメージを防いでいることは明らかです。20年以上前、国立保健衛生研究所(NIH)のバートン・バークソン医学博士により、リポ酸が毒性の強いハラタケが原因で起こる致死性の肝臓病に効果のあることがわかりました。

ハラタケによって肝臓細胞を即座に破壊する毒性のあるフリーラジカルの生成が促されるため、この毒キノコを食べると60~90%の割合で死に至りますが、

リポ酸はこのキノコに効果があることがわかっています。リポ酸のもっとも重要な働きのひとつが、血糖値を正常に保つことです。多くの中高年の血糖値が高いのはインスリン抵抗性(Ⅱ型糖尿病)を示しているからで、アメリカでは患者数が1600万人にも上ります。

インスリンとは、糖分やグルコースを体細胞が利用できる形に分解してくれるホルモンです。このインスリンに耐性があると、血糖値やグルコース値が高くなりやすく、やがてアテローマ性動脈硬化症、神経障害、失明といった重大な症状を引き起こします。

ヨ一口ッパでは昔からインスリン抵抗性やほかの糖尿病が原因となる合併症の治療にリポ酸が使われていますが、アメリカではまったく使用されていませんでした。最近になってボディビルダーの間でリポ酸の効果が話題になってきました。運動中、からだはエネルギーをつくり出すためにふだん以上の酸素を要求します。酸素使用量が増えるほどフリーラジカルが生成され、激しい運動を行った際に筋肉痛やこわばりが起こるようになります。

リポ酸を摂取していると、トレーニングを行っても翌日に痛みや不快感を感じないという話を聞きました。パッカー博士の研究室ではさらに驚くニュースがあります。最近動物実験でリポ酸が卒中(脳に血液が送られなくなる) による損傷を治癒することがわかったのです。卒中は死因の一位であり、これによって脳に重度の損傷が起き、マヒしてしまうことがあります。

これまで卒中の治療法は見つかっていませんが、人間に対しても動物実験と同様の効果があるとすれば、卒中による損傷を最小限に抑える治療法となり得るかもしれません。

ヨーロッパでは、医薬品として30年以上も前から糖尿病の合併症治療に使用されてきました。日本でも強肝剤、肉体疲労時の栄養補給などでの実績があります。
そして2004年6月、厚生労働省によってαリポ酸は医薬品だけでなく、サプリメントとしての使用が認められました。

欧米ではかなり前から糖尿病の薬として注目されていたので日本ではαリポ酸の作用や特効成分に気づくのが遅すぎたといえるでしょう。